· 

第13回大阪耳鼻咽喉科臨床懇話会

演題①:甲状腺未分化癌の治療の現状

演者:大阪急性期総合医療センター耳鼻咽喉・頭頚部外科 森将歴史 先生

 

演題②:心因性めまいとPPPD(持続性知覚性姿勢誘発性めまい症)

演者:大阪急性期総合医療センター耳鼻咽喉・頭頚部外科 主任部長 宇野敦彦 先生

 

演題③:昨今の精神科医療と総合病院精神科

演者:大阪急性期総合医療センター精神科 主任部長 松永秀典 先生

講演②

  • メニエール病や良性発作性頭位めまい(BPPV)、前庭神経炎、心因性めまいなど、日本めまい平衡医学会が示しているめまい疾患のいずれにも合致しない場合には「めまい症」と診断される。宇野先生の過去の調査では心因性めまいはめまい疾患の3%程度、どの診断基準にも合致しない「めまい症」は20-25%程度ではないかとのこと。
  • めまいの国際学会であるBarany Societyはこれまでの日本のめまい疾患では定義されていないめまい疾患:持続性知覚性姿勢誘発めまい(persistent postural perceptual dizziness;PPPD)の診断基準を定めた。PPPDは、何らかのめまい疾患が先行し、その後に続発する慢性持続性のめまい。
  • これまでもPPPDに似た病態としてPhobic postural vertigo(PPV:恐怖性姿勢めまい)、Space motion discomfort、Visual vertigo、Chronic subjective dizzinessが知られていた。それぞれの診断基準の類似性が非常に高いため、国際学会がこれら4つのめまい症をPPPDのして一つの疾患概念に整理した。
  • PPPDのイメージは、治るはずのめまいが、治らず慢性化し、回転性めまいから浮動感へと変わっていくという感じ。体動や視覚刺激で悪化しやすく、瞬間的に増悪するなど、症状に変動があることも多い。器質的疾患や精神疾患が先行し、やがて機能性疾患になっていくようなモデルとのこと。
  • 新潟大学耳鼻咽喉科・頭頸部外科学分野の八木先生がPPPDの問診票を作成中とのこと。
  • 当院でも専門医により原因不明の持続性の「めまい症」と診断され、困っている患者さんが散見されます。診断としては正しいのですが、除外診断なので患者さんの不安も強くなる印象でした。日本のめまい分類にはないPPVではないかと素人ながら考えていたのですが、今後は一部のめまい症はPPPDと診断され、なんらかの有効な治療が提供されるようになるのではないかと感じました。

 

講演③

  • 日本の精神科医療の歴史と現在の潮流についての講演でした。
  • 1950年以降に近代的な法整備が進み、精神保健福祉は収容から人権保護の流れにある。
  • 薬物面でも1950年以降にベンゾジアゼピンが開発され、精神科医療は薬物介入の時代に入った。1980年代にはSSRIも開発され、選択肢が増えている一方で各薬剤の副作用に対する対応も求められる。
  • 薬物療法で十分な治療効果が得られない場合は、電気けいれん療法がおこなわれることがある。電気けいれん療法は、薬物治療が登場する以前から行われてきた治療法の一つ。現在は全身麻酔薬と筋弛緩剤を使用して、施術による苦痛やけいれんを緩和した、修正型電気けいれん療法として施術されている。適切に修正型電気けいれん療法を導入すれば、症状を早期に改善できることがある。大阪急性期総合医療センターでは修正型電気けいれん療法も行っているとのこと。
  • 大阪急性期総合医療センターは骨折等の外傷、感染症、悪性腫瘍、急性腹症、妊娠・出産、糖尿病、重度栄養障害などの身体疾患を有する精神疾患患者さんに特化して診療しており、緊急措置入院等に対応されている。そのため、外来はできる限り縮小している。
  • なかなかこういう講演を聞く機会がないので大変勉強になりました。これまで精神科医療の歴史を勉強したことはなかったのですが、精神科領域の法律、薬物、薬物以外の介入方法の歴史を振り返ることで現代の精神科医療の在り方が非常にわかりやすく、記憶が整理されました。(学生時代、不勉強でしたので、習ったかもしれないのですが、知らなかったことをこの講演会で多く再発見できました...。)