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Brain & Heart disease Network Conferenceに参加

演題: 心房細動とアブレーションについて

富永病院 循環器内科 部長 氏野経士 先生

 

2019年3月29に改定された不整脈非薬物治療ガイドラインの概要をプライマリケア医向けに講演されていました。

  • これまでは、若年者の発作性・持続性心房細動、若年・高齢者の心不全を合併する心房細動を積極的なアブレーション適応例を考えて基幹病院に紹介してきましたが、改定されたガイドラインではより広範に適応を検討してよい。
  • アブレーションの適応を検討する際には、年齢、症状、心房細動の進行度のばらばらに評価するのではなく、患者さんの全体像をよく考えて総合的に判断することが重要である。
  • アブレーション前に少なくとも3週間の抗凝固療法を行い、休薬せずにアブレーションを行うことが推奨された。
  • アブレーションに際しては、中和剤があり、エビデンスも豊富なワルファリンとダビガトランの推奨度が高い。
  • アブレーション成功後には、少なくとも3ヶ月は抗凝固治療を必ず行い、以降はCHADS2スコア2点以上では継続する。
  • 心房細動の発生した場合でも以下の要因を排除することで頻度を軽減できるかもしれない:甲状腺機能亢進症• 肥満• 睡眠時無呼吸症候群• 高血圧• 糖尿病• 高脂血症• アルコール多飲・喫煙等

などを学びなした。

 

多くの臨床試験が行われているのでその要点をまとめているガイドラインは日々改定されていきます。

 

 

演題: 卵円孔開存と潜因性脳梗塞・片頭痛:どこまで明らかになったのか

岡山大学病院 循環器内科 准教授 赤木禎治 先生

  • 塞栓源不明の脳塞栓症(Embolic Stroke of Undetermined Source:ESUS)の一因として卵円孔開存(PFO)が以前から知られている。
  • 卵円孔は、胎児期では右心房から左心房に血液が直接流れ込むための正常な構造で、出産後は閉鎖する。しかし、閉鎖不全が起きるとPFOになる。もっともよく見られる先天性心臓異常で成人の約20-25%で認められる。
  • PFOがあると、下肢の深部静脈血栓等が右心房から左心房に直接流れ込み、奇異性塞栓症の起因となる。
  • 最近は、経頭蓋ドプラ法に加えて、経食道および経胸壁心エコーにマイクロバブルテスト法や正確なバルサルバ法を組み合わせることで、以前よりPFOは検出率が高まっている。
  • たとえPFOによる奇異性塞栓症を証明したとしてもアスピリンやDOACによる十分な再発予防効果は証明されていない。
  • 近年はPFO閉塞デバイスが多く開発されており、奇異性塞栓症の予防効果が期待されている。
  • その中でも2019年5月28日に経皮的カテーテルPFO閉鎖機器である「AMPLATZERTM PFOオクルーダー」が日本でも使用が可能になった。
  • また、PFO症例では片頭痛の合併率が高いことも知られており、その中でも前兆のある片頭痛に対してPFO閉鎖術が有効である可能性があり、その検証が多方面から行われている。

専門の先生方の間ではhot topicだったと思うのですが、プライマリケア医向けの非常に勉強になる講演でした。

実際には理論値ほどPFOと診断される症例は少ないように感じたのですが、新しい視点を得ることができました。